「罪の声」感想文

ずっと気になって読みたかった本、ようやく読むことが出来た。

私の1つ前の世代の事件。名前は何となくは知っていたけど、結構複雑な事件だったんだな。

フィクションだけど、史実通りに再現されている。

この頃盛んだった社会主義共産主義、今の私達には革命に投じる気持ちは分からない。

戦後平和な日々を取り戻す一方、まだ戦争の記憶や傷が生々しく残っている中で、当時の人達はさらなる安定や幸福を求めようとしていたのかな。

読みながら、光と影の印象を強く感じ、特に影の部分の丁寧な描写が心に残る。

犯行や革命に投じる人を全く理解できない今の私が、物語の中で犯人が語る言葉から気持ちを想像することが出来、興味深かった。

 

「自分たちの革命を成し遂げる上で敵の殲滅は、必要不可欠な要素だと信じていましたから。『正義の報復』のための『的確な暴力の行使』といったところです。実際のところ、正義と暴力を結びつける構図は、戦争の縮図です。犠牲者が増えるにつれ憎しみが募り、双方とも感覚が麻痺していったんだと思います。当時の私たちの同志の間では、これらの行動は内ゲバではなく『反革命集団との闘争』という位置づけでした」

 

怒りのやり場を求めて暴力に明け暮れ、それを正当化するための根拠を探し、もっとめらしい理屈を捏ねくり回すだけのくだらない男が一人出来上がった。それが私です。

 

『英国病』戦後、イギリスは福祉と経済の理想像を具現化しようと試みました。いわゆる「ゆりかごから墓場まで」です。しかし1960年代半ば以降、社会保障費の増加で財政が逼迫し、産業保護によって国際競争力が低下しました。ストライキが横行し、70年代後半になりと、ロンドンの街角ではごみ袋や段ボールなどが積み上げられて放置されていました。かつての大英帝国は、人間の幸福を追求した末、泥沼に沈んでしまったんです。

人は満たされると腐るのだと悟りました。

 

いつの時代も、もちろん今も、素晴らしい理念を掲げながらも支持されない人達がいる。

それはきっと正義じゃないのが、本当は周りが分かっているから。

もっともらしい大義名分を掲げれば、どんな事をしても正義になるなんて有り得ない。そうする理由、正当化する言葉を探せば幾らでも出てくる。言葉は人を動かす事の出来る武器ではあるけど、相手を判断するのは言葉ではなく行動だな。何を言ってるかじゃなく、何をしているか、それを見間違えないようにしないといけないと思った。

そして今の時代でもいるだろう、闇の世界に住んでいる子ども達。平和を訴えられるのは、自分が平和な場所にいるから。そうでない人はそんな事を訴える事も出来ないんじゃないか、本当の弱者はそうなんじゃないか、そんな風に思った。

 

面白い1冊でした(^o^)/